腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「まさか、あれが引き金だったって言いたいのかい? 僕はただ世間話をしただけだよ? 言いがかりをつけないでくれ」
「確かに世間話といえば、世間話だよ。身内として、従兄弟の結婚話を聞くことはな。だけどそれが俺の元カノだったら? 俺の女を奪っておいて、悪趣味なんだよ」

 弦の言葉に、血の気が引いた。湊さんの所業にではない。二人の会話に、自分が出てきたのが問題なのだ。名前が出たわけではないけど、事情知っている人ならば、私だって気づく人はいるはずである。
 なにせ二人が話している場所は……待合室のすぐ近く。隅にいるとはいえ、椅子に座っている人たちからまる見えだった。

 なんだってあんな場所で話しているのよ! これ以上の会話は危険だわ。すぐにやめさせないと、私の名前がいつ飛び出てくるか、分かったもんじゃないもの。

「やめてください!」

 私は急いで、湊さんの前に出た。目で「余計なことは言うな」と睨みつけるが、弦は逆に、私の姿を見て、ニヤリと笑った。

「役者が揃ったな」
「何を……」
「俺をこんな目に遭わせたお二人さんが現れた、と言っているんだ」
「っ!」

 つまり、まんまと弦の罠に引っかかったってこと? 後ろにいる湊さんが、それに気づいているのかは分からない。だけど、もういい。いらない。私に必要なのは、もう湊さんじゃないから。