「まぁまぁ、その辺にしておいてあげなさいな。栞さんは一晩、路上に放置されていたのだから、姉である貴女が労ってあげなくてはどうするの?」
「院長夫人。申し訳ありません。ご迷惑をおかけしまして」
姉が頭を下げる先を見ると、髪を綺麗にセットし、且つ首に淡い色のスカーフを巻いた柔らかな印象の老齢女性が目に入った。
ベッドの近くで姉が立っていたため、視界に入らなかっただけで、ずっと近くの椅子に腰かけていたようだった。しかもその老齢女性は、私を助けてくれた恩人だという。それだけでも頭が下がる思いだったのに、彼女はここ、芳口病院の院長夫人。姉はそこに勤めている看護師だった。
紹介された時、血の気が引いたのは言うまでもない。ただでさえ、事故で血が少ないというのに……少しは手加減をしてもらいたいものである。と愚痴をいえた立場ではないのだが……。
「いいのよ、一ノ瀬さんって、やだわ、私。一ノ瀬さんが二人いるのに、これでは紛らわしいわよね。琴美さん、栞さん、とお呼びしてもいいかしら」
院長夫人こと、芳口園子さんは、そう言いながら口元に手を当てて微笑んだ。その一つ一つの仕草がとても上品に見えて、私も姉も自然と恐縮してしまう。
「院長夫人。申し訳ありません。ご迷惑をおかけしまして」
姉が頭を下げる先を見ると、髪を綺麗にセットし、且つ首に淡い色のスカーフを巻いた柔らかな印象の老齢女性が目に入った。
ベッドの近くで姉が立っていたため、視界に入らなかっただけで、ずっと近くの椅子に腰かけていたようだった。しかもその老齢女性は、私を助けてくれた恩人だという。それだけでも頭が下がる思いだったのに、彼女はここ、芳口病院の院長夫人。姉はそこに勤めている看護師だった。
紹介された時、血の気が引いたのは言うまでもない。ただでさえ、事故で血が少ないというのに……少しは手加減をしてもらいたいものである。と愚痴をいえた立場ではないのだが……。
「いいのよ、一ノ瀬さんって、やだわ、私。一ノ瀬さんが二人いるのに、これでは紛らわしいわよね。琴美さん、栞さん、とお呼びしてもいいかしら」
院長夫人こと、芳口園子さんは、そう言いながら口元に手を当てて微笑んだ。その一つ一つの仕草がとても上品に見えて、私も姉も自然と恐縮してしまう。



