腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「栞……さっきはすまない」
「えっと、何が?」

 注文していた料理が運ばれて、すぐのことだった。大葉が乗った私の好きな、キノコの和風パスタを食べていたため、何を謝られているのか、さっぱり分からなかったのだ。

「弦のこと。もしかしたら、好きになったんじゃないか、と思って……つい」
「あ、あり得ないよ。なんでそんな勘違いをしたの?」

 いや、似ているって言っていたから……まさか、そういうことだったの?

「もう! 弦さんは、お姉ちゃんの元カレなんだよ。私がどれだけお姉ちゃんのこと嫌いなのか、尚史さんは知っていると思っていたんだけどな。そんな相手を好きになるなんて、絶対にないからっ!」
「そうだよな。すまない。ここに来る前から、栞が嬉しそうにしていたのを見て、俺も気分が晴れた」
「っ! だって……尚史さんとこうして、一緒にお店に入ったり、食事したり……デートできたから」

 すると、尚史さんも気がついたらしい。いや、私だけがそう思っていただけなのかもしれないけれど。

「ま、待ってくれ。これをカウントされると困る!」
「どうして?」
「初デートが、これだけというのは……」
「私は十分だけど」

 尚史さんと付き合っていなかったら、こんなお洒落なお店に行くことはなかったと思うし。でも、尚史さんはダメだったらしい。「後日、ちゃんとさせてくれ」というので、私は「うん」とだけ答えておいた。
 これ以上なんて、想像できなかったからだ。それこそ、物語の世界でないかぎり。