腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「それに今回のことは、巻き込まれたとはいえ、感謝しているんです。事故が起こるまで、私はお姉ちゃんが湊さんと付き合っていたことも、弦さんと付き合っていたことも知らなかったんですから」

 知らない間に、私がお姉ちゃんの足を引っ張っているとか。お姉ちゃんの苦労の原因は私だとか。いつもそう。気がついたら、私の知らないところで勝手に話が流れている。
 そしていつも、私の言葉は誰にも届かない。私を可愛がってくれる、園子夫人でさえも。

「だから私に、引け目を感じる必要はありません。弦さんも尚史さんも、好きにお姉ちゃんたちに仕返しをしてください。私は尚史さんと弦さんのお陰で、お姉ちゃんと距離を置けたし、現状も理解できました。立ち向かうのに、必要な力を得られたんです。だから私だって戦えます」
「ダメだ。場所は病院なんだぞ。栞まで奇異な目で見られる」
「それは尚史さんと弦さんだって——……」
「俺らはまぁ、すでに悪目立ちしているから。今更だとは思うけどな」
「それに尚史はともかく、俺なんて誰も迎えに来てくれなかったんだ。どうってことはない」
「で、でも……」

 いたたまれない気持ちになり、私は静かに椅子に座った。すると横にいた尚史さんが、私の頭をそっと撫でる。

「もう病人でもないんだ。用もないのに芳口病院にいたら、不審に思われるぞ」
「誰かが琴美に知らせるかもしれないからな。そしたら計画がパーになる」
「だけど……」

 私だけ安全圏にいるのが、仲間はずれにされた感じがして嫌だった。これがただの我が儘だったとしても。けれどそれ以上に、駄々を捏ねて困らせたくない気持ちもあった。

「それなら何をするのか、だけでも教えてください」

 せめてそれだけでも聞いておきたかった。