「自由になるんです。逃亡とは違うんですから、一緒にしないでください」
もう一度、同じ言葉を繰り返しながら、私は尚史さんと弦のいる席に近づいた。
尚史さんは驚いているようだったけれど、私の姿が見える位置に座っていた弦さんは、微動だにもしていなかった。逆に私と尚史さんを見て、何かを察したらしい。
「おいおい。痴話喧嘩に俺を巻き込むなよ。大方、尚史が悪いんだろう? そもそも会う約束をしていたのは、尚史じゃなくて、一ノ瀬妹の方だったんだから」
「……大方ではなく、尚史さんが一方的に悪いんです。そこのところ、間違えないでください。あと、別に栞でも構わない、と前にも言いましたけど?」
「でもなぁ……」
尚史さんが姉のことを、「一ノ瀬姉」と呼んでいるのが気になるらしい。弦さんは言い淀みながら、視線を尚史さんへと向けた。
「大丈夫です。さっきも言ったように、尚史さんがすべて悪いので、文句は言わせませんから」
「だ〜か〜ら〜、痴話喧嘩に巻き込むなよ。尚史、本当にいいんだな」
「……今の俺に、拒否権はない」
「おいおい……すでに尻に敷かれているのかよ」
大変だな、という声が聞こえたような気がしたが、私は素知らぬ顔をして、尚史さんの横に座った。
もう一度、同じ言葉を繰り返しながら、私は尚史さんと弦のいる席に近づいた。
尚史さんは驚いているようだったけれど、私の姿が見える位置に座っていた弦さんは、微動だにもしていなかった。逆に私と尚史さんを見て、何かを察したらしい。
「おいおい。痴話喧嘩に俺を巻き込むなよ。大方、尚史が悪いんだろう? そもそも会う約束をしていたのは、尚史じゃなくて、一ノ瀬妹の方だったんだから」
「……大方ではなく、尚史さんが一方的に悪いんです。そこのところ、間違えないでください。あと、別に栞でも構わない、と前にも言いましたけど?」
「でもなぁ……」
尚史さんが姉のことを、「一ノ瀬姉」と呼んでいるのが気になるらしい。弦さんは言い淀みながら、視線を尚史さんへと向けた。
「大丈夫です。さっきも言ったように、尚史さんがすべて悪いので、文句は言わせませんから」
「だ〜か〜ら〜、痴話喧嘩に巻き込むなよ。尚史、本当にいいんだな」
「……今の俺に、拒否権はない」
「おいおい……すでに尻に敷かれているのかよ」
大変だな、という声が聞こえたような気がしたが、私は素知らぬ顔をして、尚史さんの横に座った。



