腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「まず先に、礼を言わせてくれ。俺の名前を出さずにいてくれたこと、有り難いと思っている」
「……なんだか気持ち悪いな」
「人が頭を下げているのに、気持ち悪いって……酷くないか?」
「俺は俺のためにしたんだ。お前のためじゃない、と言いたいところだが、名前を出さなかったのは、お前を同志だと思っていたからだ」
「同志?」

 意外な言葉に、思わず繰り返してしまった。まさか弦が、俺のことをそんな風に思っているとは、想像すらしなかったからだ。すると、俺の反応はおかしかったのか、弦がふっと笑った。

「湊の被害者という意味でのな」
「……だけど俺は、湊と戦っていない。軽口は叩くが、それまでだ。弦のように対立できない弱腰な人間を、同志とは言わないだろう?」
「湊に恩があるのは知っているさ。でも面白く感じていなかったからこそ、俺にあんなことを言ってきたんだろう? 琴美の妹を襲えって」
「っ!」

 ニヤリと笑う弦を見て、思わず机を叩いた。