腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

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「まさか出迎えが、お前だけだとはな」

 しばらく警察署の前で待っていると、ジムサックを持った弦が出てきた。数週間とはいえ、荷物は一つに、出迎えは俺一人。

 話には聞いていたが、ここまで見捨てられていたとは……。

「自業自得だろう。湊の名前を出さなければ、せめて院長夫妻は来ていたと思うぞ」
「お前、本気で言っているのか?」
「……言いたいことは分かる。だが、ここだと」

 そう言いながら、視線を警察署へと向ける。栞の交通事故は、示談で幕引きとなったが、用心に越したことはない。
 俺たちは真相を隠し、警察を欺いた人間なのだから。今更、事故を事件にしたくはなかった。

 それは弦も同じだったのだろう。再び警察署に入れられたくないのか、簡単に移動を受け入れてくれた。

 場所は栞が指定した喫茶店だ。正確には弁護士が手配した、といってもいい。警察署から歩いていけて、且つ、人の入りが少ない店。
 依頼人とよく打ち合わせに使っている店なんだそうだ。だからだろうか。店内に客は一人もいないのに、雰囲気がよく、居心地はまったく悪くなかった。

 それはおそらく、店員が気さくに案内をしてくれたからだろう。人懐っこそうに見えながら、けして余計なことも詮索もしない。
 飲み物を注文した後も、すぐに持ってきただけで、奥に引っ込んでいってしまった。

 お陰でこちらも、すぐに話を切り出すことができた。