腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 バタン。

 静かに玄関の扉を閉めたつもりでも、廊下に鳴り響く。まるで栞を置いて出ることを、非難されているような気分だった。

 いや、実際に酷いことをしている自覚はある。
 ようやく栞に触れ、優しく抱こうと努力をしても、これまでの我慢があまりにも長くて……おそらく無理をさせてしまったと思う。それなのに、目を覚ます前に家を出る、というあるまじき行為をしているのだ。

 本当は栞が起きるまで、傍にいたかった。だけど、栞よりも先に、アイツとサシで話をする機会は、今を逃せばもう来ない。

 幸い栞から、出所の時間や店の名前、待ち合わせの時間に至るまで、聞き及んでいる。

「今なら、警察署で張っていれば会えるだろう」

 そうして俺は、栞を残してマンションを後にした。