腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「弦は俺の弱味を握っている。さらに栞を盾に取られたら、と思うと……怖いんだ」

 出会ってから、見たこともないほど苦しそうな顔をしている尚史さん。私は手を伸ばし、そっと胸に引き寄せた。

「かっこ悪いな。出会った時に戻りたいくらいだ」
「そう? 私は今の方がいいよ。なんていうか、対等になれたような気がするから」

 特に今は、松葉杖が取れて、普通に歩けるようになった。それだけでも大きい。もう足手まといにはならない。
 だけど尚史さんが言っているのは、そういうことじゃないんだよね。

「覚えているかな。私を迷わずに選んで良かったって、言ってくれたこと。あの時はお姉ちゃんの名前を出しちゃったけど……別の誰かを尚史さんが選んで、今ここにいるのが、その別の誰かだったら、凄く……嫌だよ」

 尚史さんの隣に、私以外の人がいるなんて、考えただけでも嫌。

「だからね。かっこ悪くなんてないの。弱った姿も全部、大好きだよ」
「俺もだ」

 そっと私の背中に手を回し、優しく口付けてくれる尚史さん。だけど優しいのは最初だけ。どんどんいつものように荒々しく、私を蹂躙していく。
 いつもと違うのは、背中に回された手が、服の中に入って来たことだろうか。

 足も完治したことだから、むしろ嬉しかった。ようやく尚史さんが私に触れてくれる。唇だけでなく、胸や足の付け根にも。それはソファーからベッドへ移った後も変わらず、いや、むしろ激しさを増し、私はだたその快楽に身を任せた。

 まさか、その翌日。尚史さんが私を置いていくとは知らずに。