腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「だから尚史さんも一緒に来て」
「いいのか?」
「むしろ来てもらわないと困るよ。もう警察署じゃないんだし、遠慮をする必要だってないんだから。それとも尚史さんは、私が弦さんと二人きりになってもいいの?」
「ダメに決まっているだろう! 弦は俺よりも……いや、湊よりも危ない男なんだぞ」

 すると何を思ったのか、急に尚史さんがキッチンから出てきて、私を横抱きにした。そのままリビングにあるソファーに座らされただけならよかったのだが、今度は左足を入念にチェックする始末。

「えっ、足はもう、完治したんじゃないの?」
「この間の診察ではそう言ったが……」
「レントゲン画像で、ちゃんと説明もしてくれたじゃない。自分の診断が信じられなくなったの?」
「そういうわけではないんだが……」

 じゃ、なんなのよ! とばかり私は尚史さんに詰め寄り、両手で顔を挟んだ。

「大丈夫だよ、尚史さん。相手は車じゃない。私たちと同じ、生身の人間。会う場所だって、路上じゃなくて、お店なんだから」

 仮に何かが発生したとしても、誰かが警察に通報してくれるだろう。それに今度は一人じゃない。

「忘れているかもしれないけど、尚史さんも一緒なんだよ。自分の身は自分で守るつもりだけど……頼りにしているんだから」

 あまり弱気な態度を見せられると、こっちまで不安になってくる。

 すると両手首を掴まれ、一気に距離を詰められた。その拍子に体が後ろへと傾き、ソファーに倒れ込む。思わず閉じた目を開けると、尚史さんが私を見下ろしていた。