腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「手に入れられないのなら、誰の手にも渡らないようにする。そんな考え方もあるからな」
「……乱暴だね」
「そういう考えじゃなかったら、無関係な栞を轢こうとしないさ。いくら俺の言葉に惑わされたからといっても。だから今回は……何をする気なんだろうな」
「やっぱり、尚史さんもそう思う? 弦さんは、きっと何かする気だと思うの。私は面会できなかったけれど、弁護士さんが忠告してくれたから」

 弦さんの出所日が決まったと連絡を受けた時、会えるように調整してほしい、と弁護士さんに頼んだのだ。すると、『構いませんが、お気をつけください』と前置きをした後、彼はこう述べた。

『私との会話中、彼は終始落ち着いていました。傍から見れば、反省していると捉えることもできるでしょう。けれど私にはそう思えませんでした』

 いくつもこういう案件を担当してきたベテランの弁護士さんでさえも、そう思うのだ。

「何をする気かまでは聞けなくても、弦さんの気持ちは聞けるでしょう? そこを探りたいの」

 尚史さんは弦さんのことをよく知っていても、私は片手ほどしか会っていない。そんな相手の考えなど、分かるはずもないのだ。

 私はカウンターの上に手を乗せ、身を乗り出した。