腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 やり取りや大まかな手続き、といったことは、弁護士さんにお任せになるけれど、退職手続きをしている最中の私としてはとても有り難かった。
 再度、警察署へ行く手間も省けるからだ。

 芳口病院内の噂で大変な中、弦さんの世話までしている余裕があるとは思えない。だけど姉のことだ。何をしてくるか分からない以上、鉢合わせになることは避けたかった。

「こんな騒ぎになっても、お姉ちゃんは湊さんを諦めないのかな。それとも……」

 自動ドアが開き、ちゃんとした足取りで芳口病院の外へと出る。もう松葉杖の音は聞こえない。一歩二歩。さらに進んだ後、後ろを振り返り、芳口病院を見上げる。

「まだメリットが?」

 いや、どちらにせよ、私の目的は姉の復讐ではない。自由になることだ。尚史さんと一緒に。

「そのためなら、なんだってするよ。お姉ちゃんだって、手段を選ばないんだから、私だって……」

 躊躇していたら負ける。そんな気がしたのだ。

 そうして月日は流れ、示談が成立。私の退職準備と引っ越し準備が着々と進んでいる中、弦さんの出所する日取りが決まった。そう、ようやく警察署から外へ。いよいよ弦さんが出てくるのだ。