腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 そう、逆に示談するように仕向けるの。弦が岡先生の名前を出さないのなら、そのまま一人の犯行として終わらせてあげればいい。
 出てきた弦は、きっと鬱憤を晴らすように、大暴れしてくれるわ。私と湊さんと弦の色恋沙汰は……公になってしまうけれど、それがキッカケで婚約を白紙に戻せるかもしれない。

 幸い、湊さんと弦の評判は悪くなっているんだもの。私の評判が下がることはないと思う。逆に弦を唆して、岡先生の名前を口に出すように仕向けられれば、私は被害者の姉。揺るぎようのない立場を得られるわ。
 さらに栞も、岡先生と一緒にいられなくなる。そしたら、私のところに戻って来るしかないよね。

「岡先生のところのマンションで、随分と優雅な暮らしをしているんだもの」

 栞のお給料だけじゃ、風呂ナシ、洗濯機は外のボロアパートがせいぜいよ。今更、そんな惨めな生活を送るのは嫌でしょう?

「ふふふっ」

 思わず廊下の壁に背を預けた。

 だって歩きながら、こんな姿を誰かに見られたら、大変だもの。

 けれど笑いを抑えることはできなかった。

 窮地が逆に、元に戻る好機へと変わるなんて……声を大にして笑いたいくらいだわ。

「待っていてね、栞。もうすぐ、お姉ちゃんが元に戻してあげるから」