腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 ***


「おかえりなさい」
「ただいま……その様子だと、大丈夫だったようだな」

 どうやら尚史さんも、姉の襲来を気にしていたらしい。元々、尚史さんが寝るためだけに借りたマンションだ。セキュリティ面では……少し不安があるのは仕方がない。
 けれど尚史さんが芳口病院を辞めたら、引っ越す予定なのだ。今はお互いに我慢するしかなかった。

「病院の方はどうだったの? 無事、噂になっていた?」
「あぁ。師長どころか、院長夫人も気にするほど広まっていたよ」
「園子夫人が?」

 姉と湊さんのことばかりで、すっかりと頭から抜け落ちていた。思わず、リビングに向かう足が遅くなる。
 リハビリのお陰で、松葉杖なしで歩いているとはいえ、その速度は通常よりも遅い。尚史さんは私の速度に合わせてくれているけれど、さすがに気づいたらしい。安心させるように、私の頭に手を乗せてくれた。