腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「師長も……聞いたんですね、あの噂。しかも信じてくれていたとは、思いもしませんでした」
「っ! まさか嘘なんですか!?」
「いいえ。ただ普段の俺は……まぁ、アレですから。湊の信用の方が強いでしょう? 誰も信じないと思ったんですよ」
「はぁ~。確かに岡先生はそうですが、お相手が栞さんですからね。園子さんも心配して、私に電話してきたんですよ」

 そういえば、師長と院長夫人は仲が良かったな。噂が院長夫人の耳に届いたとは信じがたいから、おそらく警察の方から連絡がいったのかもしれない。
 弦の件で、まだ湊は疑われている立場だ。それなのに、不用意に接触した挙句、怪我をさせた、と来たら、心配で連絡を取るのも無理はないだろう。

 そもそも院長夫人は、院内でのトラブルを、数多く処理してきた人物だ。師長が気にするのも、ただ仲がいいというだけではないのだろう。
 芳口病院の評判に関わること、だからだ。これはいい。

「院長夫人には、俺から詳細を説明しますよ。人伝より、信頼性がありますから」
「そ、そうね。あの噂も、どこまでが本当なのか、疑わしいし」
「湊が乱暴したのは、確かですよ。松葉杖をついているのに、肩を掴まれたと言っていたので」
「まぁ! 仮にも医者ともあろう者が、そんなことを……」

 師長の驚きに、内心ニヤリとほくそ笑む。おそらく、湊に限ってそんなことを、と思っているのかもしれない。だからさらに、俺は言葉を重ねた。