腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「……いいんですよ。今日くらい」
「えっと、何を?」
「サボりです。岡先生の様子を見るかぎり、芳口先生の噂は本当だったことが分かりますから」

 翌日、湊が栞を襲った話が、病院内で話題になっていた。栞の名前は伏せられ、ただ松葉杖をついた女性、とだけだったが、湊の周りにいる人間で松葉杖をついているのは一人しかいない。
 さらに昨日、俺が急いで帰った姿も見られていたらしく、すぐに栞だと分かったらしい。

 お陰で病院に着いた瞬間、コソコソと話す声が、終始俺の周りで囁かれた。しかし俺は俺で、それどころではなかったため、あまり気にしていなかった。

 元々、評判が悪いことで有名だったからな。興味本位に無遠慮な視線と言葉を投げかけてくる人間なんて、山程いた。
 まぁ、皆、それほど暇なんだろうな、くらいにしか思わなかったが……どうやら今回は違うらしい。

 そんな俺の悪い評判に、負けじと立ち向かってくる師長でさえ、こんな反応なのだ。俺が仕掛けたとはいえ、これほどまでとは思わなかった。

『策を巡らせて、罠を仕掛けたんだから同じだよ』

 脳裏に昨日、栞に言われたことを思い出した。

 策士、かぁ。