腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 やってしまった……。

 足が治るまでは手を出さない、という自戒を栞に告げていたのにもかかわらず……怪我の確認とはいえ、やり過ぎた。それが医者としての自分なのか、恋人としての自分なのか、分からない。
 湊に怪我を負わされた、と思った途端、怒りが沸き起こり、自分を止められなかったのだ。

 その結果がこれだとは、正直、思いたくもなかった。感情的になるにしても、怒りで栞の体に触れるなど……最低だ。

「岡先生、大丈夫ですか?」

 栞と初めて会った中庭のベンチで座っていると、ふいに声をかけられた。

「師長……すみません。今、戻りますんで」

 またサボりがバレたのだと思い、腰を上げると、なぜか師長に手で止められた。しかも申し訳なさそうな顔までされてしまったのだから、立ち去ることもできない。とりあえず俺は、再びベンチに腰を下ろすしかなかった。