「前に栞が、自分の分の権限も大いに使ってほしい、と言ったことを覚えているか?」
「え? あ、うん」
なんだったっけ?
「栞が弦に会いに行こうとした時のことだよ。自分は被害者なんだから、と。得意の悪巧みを巡らせるべきだとな」
「あぁ、尚史さんらしくなくて、発破をかけた時のことね」
「らしく……確かにそうだったかもな。あの時は、とにかく栞の安全を第一に考えていたから」
それは今だって同じだと思った。女性警察官に過保護だと言われてしまったほどなんだから。
けれど私は口を噤んで、尚史さんの言葉の続きを待った。
「それで思ったんだ。湊の社会的な立場を崩せるのは、栞の被害者としての立場だけなんだってことに。同じ外科医である俺や看護師の一ノ瀬姉だと、リスクが伴う。だけど栞は違う。まだ松葉杖が取れていないこの状況でないと、この計画は成立しないんだ」
「えっ、待って待って。よく分からないんだけど」
「簡単にいうと、誰がどう見ても怪我人だと分かる人間に、湊が危害を加える。その状況がほしかったんだ。一ノ瀬姉は被害者面したいだろうから、そんなリスクは犯さないだろうけど、湊はその点、考えなしだからな」
「……つまり、湊さんを陥れるための罠が必要で。私は囮になっていたってことで合っている?」
「正確に言うと、囮にさせられていた、だな。自分の意思じゃないんだから」
あぁ、それで。尚史さんの困った表情の理由が、ようやく理解できた。
「え? あ、うん」
なんだったっけ?
「栞が弦に会いに行こうとした時のことだよ。自分は被害者なんだから、と。得意の悪巧みを巡らせるべきだとな」
「あぁ、尚史さんらしくなくて、発破をかけた時のことね」
「らしく……確かにそうだったかもな。あの時は、とにかく栞の安全を第一に考えていたから」
それは今だって同じだと思った。女性警察官に過保護だと言われてしまったほどなんだから。
けれど私は口を噤んで、尚史さんの言葉の続きを待った。
「それで思ったんだ。湊の社会的な立場を崩せるのは、栞の被害者としての立場だけなんだってことに。同じ外科医である俺や看護師の一ノ瀬姉だと、リスクが伴う。だけど栞は違う。まだ松葉杖が取れていないこの状況でないと、この計画は成立しないんだ」
「えっ、待って待って。よく分からないんだけど」
「簡単にいうと、誰がどう見ても怪我人だと分かる人間に、湊が危害を加える。その状況がほしかったんだ。一ノ瀬姉は被害者面したいだろうから、そんなリスクは犯さないだろうけど、湊はその点、考えなしだからな」
「……つまり、湊さんを陥れるための罠が必要で。私は囮になっていたってことで合っている?」
「正確に言うと、囮にさせられていた、だな。自分の意思じゃないんだから」
あぁ、それで。尚史さんの困った表情の理由が、ようやく理解できた。



