腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 けれど不安がない、といえば噓になる。
 ここ以外、雇ってもらえるところはない、という強迫観念で、必死にしがみついてきたからだ。二人だけの姉妹。親が残してくれたお金があったとはいえ、私の安月給で生活から姉の学費まで、みなければ、という想いでいっぱいになっていたのだ。

 その会社を辞める。辞める日が来るなんて……もっと先だと思っていたから、尚史さんにはあぁ言ったけど、すぐに割り切ることができなかった。

「折角、持て余していた時間を有効活用できると思ったのに……」

 翌日、私がしたことといえば、パソコンで求人サイトを眺めていたくらいだった。だけど仕方がない。まさか私の仕事のことまで考えてくれていたなんて、思うはずがないだろう。
 いや、今は尚史さんが私の主治医なのだから、当然かもしれないけど。そもそも松葉杖のまま仕事復帰をするのならば、尚史さんに送り迎えを頼むか、もしくはタクシー……はできればしたくないけれど、迷惑を考えるとそれしかない。
 バス、という選択肢もあるけれど、朝と夕方の通勤ラッシュ時には、周りに迷惑をかけてしまうのだ。それならば、やはりタクシーしかなかった。

 だから尚史さんの配慮は有り難い……有り難いんだけど、思った以上に心の整理が必要だった。