腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「そうか。芳口病院のために……」
「はい。今日、ここにいたのも、岡先生が栞に会わせてくれなかったのが原因なんです。二人だけの姉妹なのに、マンションへ行っても門前払いされるし、病院内では話すら聞いてくれなくて、私……」

 とうとう噓泣きまでし出した始末。
 元々、尚史さんの評判は悪いし、悪友の湊さん相手でも、その評価は有効だった。だからこそ、湊さんは自分の尻拭いを尚史さんにさせていたのだ。
 こちらが口を出しても、分が悪いように思えた。それは尚史さんも同じ考えだったのか、弁解にすら行こうとしない。

 う~ん。ここは私が行くべきなのかな。

「何もするな」
「えっ、だけどこのままじゃ、尚史さん、悪者にされちゃうんだよ」
「構わないさ。それに忘れたのか。詳しいことは帰ったら話す、と言っただろう?」

 ということは、これも尚史さんの策なの?

 私が尚史さんの言葉に驚いている間に、どうやら向こうは盛り上がっていたようで、湊さんが姉の肩を抱いている。もう二人の世界に入っているように感じた。
 これならば、私たちが去っても、気づかないだろう。

「栞。ここは空気を読んでやろうじゃないか」
「あっ、そうだね。私たちはお邪魔虫のようだから、退散しようか」

 警察署の入り口にいる警杖を持っている警察官に聞こえるように言い合いながら、私たちはその場を後にした。この声が、姉と湊さんに届いていたか、どうかは不明である。