腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 カシャン!

 警察署の前で、勢いよく音が鳴り響く。アスファルトの上に、松葉杖が叩きつけられたのだ。尚史さんが駆け寄り、私を抱きしめたからだ。

「何かあったの?」

 尚史さんの背中に腕を回す。なるべく右足に重心を置き、左足への負担を軽くした。なるべく尚史さんの方に、体重をかけたくなかったからだ。

 遠くから声をかけたとはいえ、すぐに反応を示さなかった。二度も呼んで反応したのは、尚史さんではなく、姉。どちらかというと、その姉の声に反応したような気がした。
 だから余計に心配になったのだ。姉相手に、怯むような人じゃないけれど……今の尚史さんの立場は弱い。弦さんの裏に、尚史さんがいることを知っているのは、姉と私だけなのだ。
 何かあったとしか、思えなかった。

「……大丈夫だ。栞の顔を見たら、ホッとした」

 やっぱり、何か言われたんだ。