腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「そんなことより、俺になんの用だ?」
「……ここで話すの?」
「当然だろう? 栞が出てきた時、俺がいなかったら困るのは誰だと思っている。医者の立場としても、松葉杖をついている栞を放ってはおけない」
「虫のいいことを言っているけど、それなら栞と一緒に中には入ればよかったでしょう? 弦に会えない理由を私にして……みっともない」
「勘違いするな。弦に会わないことは、前もって栞に話している。たまたまお前がいたから、言い訳みたいになっただけだ」

 俺の方が心外だ、とばかりに腕を組んで見せる。すると、それが余程意外だったのか、一ノ瀬姉が後退った。

「……今度は栞を使って、何をする気なの?」
「何?」
「だってそうでしょう? 自分の保身のために、栞を一人で弦に会わせたんじゃない」
「間違ってはいない」

 栞に「今はまだ、捕まるわけにはいかない」と言ってしまったからだ。けれど栞は、「怒っていない」と答えた。弦に轢かれなければ、俺に会うことができなかったから、という理由で。
 それですべてが許されたとは思っていない。