腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「はっ、それで? わざわざ出迎えまでした理由はなんだ? 俺たちを牽制するためか?」
「牽制? お姉ちゃんが、なんのために?」
「簡単な話だ。栞を弦に会わせたくないんだよ」

 それが理解できなくて、頭を傾げた。

「一ノ瀬姉は、栞のことを弦に話していた。芳口病院の連中に言い触らしていたのと同じことをな。だが、栞に直接会えば、それが違うことは一目瞭然だ。そうなると、誰が一番困る?」
「……お姉ちゃん」
「そうだ。弦は一ノ瀬姉の言動を疑うようになるだろう。それをさせないために、牽制しているんだよ」

 浅ましいと思ったけれど、それが姉、一ノ瀬琴美の姿だ。どんな状況に陥っても、自分を優先する女。身内であっても、利用できるものは利用する。
 さしずめ、弦さんのことも、まだ利用できると考えているのかも。尚史さんの話では、会えない湊さんの代わりに、面会に行って様子を見ているらしい。

 姉ことだから、湊さんに都合のいいように、弦さんを誘導させようとしている、とか? 元カレだから、弦さんの性格は把握しているわけだし。
 今、目の前にいることが牽制だとしたら、尚史さんの予想は当たらずとも遠からずってところかな。