腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 まぁ、寝取った側としては、それ以外の理由はないだろう。「俺の方が魅力的だった」「俺に靡くのは当然だ」とばかりに強気でいられる。
 けれど寝取られた側のプライドはズタズタだ。特に弦のような、湊を常にライバル視している男にとってはな。おそらく一ノ瀬姉への執着は、二の次だろう。

「その一ノ瀬姉はどうしているんだ?」
「なんだ? その呼び名は」
「一ノ瀬、というと栞と被るだろう? とはいえ、下の名前で呼びたくない。ただ、それだけだ」
「尚史らしいな。それで琴美の話だが、ひとまず弦を落ち着かせてもらおうと思って、警察に行くように頼んでいる」

 その言葉に、思わず立ち上がりそうになった。

 こいつ……元カレの世話を、自分の女をさせているのか? 正気かよ。いや、一ノ瀬姉が湊を選んだ理由を思えば、寝返らないって確信しているんだろうな。
 相変わらず、打算的な男だな……まぁ、そこに関しては、俺も人のことが言えた立場ではないが。

 けれど、これで辻褄が合った。やはり一ノ瀬姉は、弦から俺のことを聞いたんだ。それがたまたまだったのか。俺から栞を引き離したかったのか、は分からないが。まずはそれを止めるしかないな。