腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「湊。驚かすなよ」
「悪い悪い。それで、何か深刻な問題でも発生したのか?」

 俺の文句には一切答えず、湊はさも当然のように隣に座った。おそらく、俺がカルテを見ながら呟いたからだろう。
 手元にあるカルテの半分は、湊の担当患者のものなのだ。俺は誤魔化すようにカルテの表面を叩いた。

「何がそれで、だ。こっちの台詞だとは思わないのか? また増えているじゃないか」
「仕方がないだろう。なるべくこっちに顔を出すようにしているけど、弦の件でまだ呼び出しが来てて……」
「警察にか?」

 周りに聞こえないように小声で言った。こうして俺に言うってことは、一ノ瀬姉のように俺を疑っていないらしい。
 本当に弦の逮捕から、裏に俺がいることを突き止めたってことなのか? それとも、弦から何か聞いていたのか……これは俺も、栞とは別に警察署へ行くべきなのかもしれない。

「弦が俺の名前を出しているからな。とはいえ、直接俺が弦に何かしたわけじゃない。何度、呼び出されても、何も出やしないさ」
「出なくても、間接的に弦のプライドを傷つけたじゃないか」
「琴美のことか? それは弦の方が魅力じゃなかっただけで、俺のせいじゃない」