腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 栞がリハビリテーション科に行くのを見届けた後、俺はいつものように外科病棟へ向かう。担当医ではあるが、リハビリはリハビリで別の担当が付くため、俺は付き添えない。

 芳口病院には、未だに俺と栞の噂がされている。事故の犯人として、弦が逮捕されたからだろう。警察が勤務中の弦を連行したのがでかい。その日、出勤していた者や患者の口から広まり、今や芳口病院以外の者にも知られていた。

 報道されていないのが、せめてもの救いだった。琴美が被害者の姉という立場を使っているのか、院長が圧力をかけているのか。おそらく両方だろう。双方同じ考えをしているからこそ、表に出ずに済んでいた。

 それは俺としても、有り難い。ただでさえ、芳口病院で悪い噂を流されているところに、弦のことで腫れ物扱いである。これ以上、悪目立ちさせたくはなかった。

「まぁ、俺が言えたことではないが」
「どうかしたのか? 深刻そうな顔をして」

 後ろから声をかけられ、息が止まりそうになった。その声に身に覚えがあったからだ。