腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

 カチャッと音がした。目線を上げると、カップをソーサーの上に置いた園子夫人と目が合った。私と同じように眉を下げ、困ったような顔していて、感情が読めない。いや、正確にいうと、どちらに傾いたのか、が読めなかったのだ。

「栞さんの言いたいことは分かるわ。でも、姉妹ってそういうものではないかしら」
「えっと、それはどういうことでしょうか」

 意外な返答に、私はたじろいだ。

「湊は一人っ子だし、私も男兄弟で姉妹ではないから、栞さんの気持ちを分かってあげることはできないけれど、病院には色々な立場の人たちが入院しているの。病室で喧嘩したり、ロビーで怒鳴り合ったり。前は時々しかウチの病院に行かなかったから知らなかったけれど、栞さんのお陰で、そういう人たちのせいで、看護師がどれほど迷惑をしていたかを知ることができたのよ」

 その穏やかな声に、私はただ黙って聞くことしかできなかった。園子夫人の意図が知りたくて。