腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

「うん。確かにショックかもね。僕だったら、酷いと言ったかもしれない」

 突然、男性の声が遠くから聞こえてきて、私は横になっていた体を起こした。
 姉もその声の主が誰だか分かるせいなのか、手を貸してくれる。そこはさすが看護師と言うべきか、一切もたつくことはなかった。

 けれど男性に向き合った瞬間、女の顔に変化する。我が姉ながら器用だとしかいいようがない。声のトーンもどこか高くなり、嬉しそうにその男性の名を呼んだ。

「湊さん! これはその、誤解なんですぅ」

 姉の媚びた声が聞こえ、一気に気持ちが悪くなった。
 世の中には裏表のある人間など五万といる。その中に姉がいるのだと思えばいいのだけれど……幼い時から共に過ごしていても、これだけは慣れることはなかった。