「いえ、何も……」
と言葉を返す。
テーブルの上で、雅人さんの指先が小さく動く。
『無理してる?』
指先から紡がれる言葉が優しくて、泣きたくなってしまう。
『美織さん』
名前を呼ぶ手の動きだけで、胸が熱くなる。
この感情に名前を付けるとしたら……。
それは、紛れもなく”恋”だと思う。
でも……。
「あの、雅人さん。お仕事が忙しい中、私のためにお時間割いて頂いて、いつも申し訳ないと思っていたんです」
そう言った私の声は、震えていなかったと思う。
「手話の勉強は続けますが、お教室はおしまいにしましょう」
テーブルの上で、雅人さんの手が止まった。
その沈黙が、胸に痛い。
「……どうして?」
低い声だった。
「……どうして?」と聞かれても「釣り合わないから」なんて、言えない。
私は、視線を泳がせ次の言葉を探した。
「これ以上、ご迷惑をかけたくなくて……」
そう言って、微笑んでみせた。
でも、上手に笑えていないのが自分でもわかった。

