指先で恋を伝えて


予約してあるお店は、落ち着いた雰囲気のレストランだった。

綺麗な夜景の見える窓際の席。
静かな照明。
店員の洗練された接客。

明らかに、私には場違いな店だ。

「神崎専務、いつもありがとうございます」

店員が慣れた様子で頭を下げる。

やっぱり、雅人さんは、私なんかとは住む世界が違う。
こんな別世界のようなお店が、きっと雅人さんの日常なのだろう。
私なんて、この雰囲気に馴染めずに身の置き所が見つからない。
緊張している私に雅人さんの声がかかる。

「とりあえず、座ろうか」

そう言って、雅人さんが椅子を引いてくれた。
テーブルを挟んで向かい合う私に、雅人さんが手話で訊ねる。

『緊張してる?』

まだ簡単な言葉しか分からない。
けれど、その手の動きだけで意味が伝わった。