女神イリオネスと、九ヶ月の飴玉

 あんず色の夕日が差し込む頃、天界から続く、虹の架け橋を軽やかに滑り降りる少女がいました。

 彼女の名はイリオネス。情景を司る女神です。

 かつての彼女なら、黄金の翼を広げて真っ直ぐに目的地へ飛び立ったことでしょう。

 けれど現在の彼女は、義理の姉である悪戯女神アフディーと過ごすうちに、「道中を楽しむ」という心のゆとりを覚えていました。

 本日の任務は、母とも慕うヘローラから預かった手紙を、「眠りの神ヒュピヒュピ」に届けることでした。

「今日はこれを渡したらおしまいです。話によると、最高神ゼオス様の悪夢を止めてほしいと言う内容のようですが……眠りの神とは、一体どんな方なのでしょう? いい夢を見させ、すやすや眠らせる。そんな魔法が使えると、いうことなのでしょうか?」

 イリオネスは洞窟の奥へと歩みを進めながら、その名から想像を膨らませます。

(ヒュピヒュピ……。小動物のような姿でしょうか? もしかしたら、夢を食べるバクのような可愛い姿かも!)

 しかし、洞窟の最奥で彼女を待っていたのは、想像とは似ても似つかぬ光景でした。