ダンディなお父様、若い頃から美しかったと評判だったお母様、美男美女の兄弟を裏腹に、何故か私だけ冴えない容姿で生まれたのであった。
ならばと、何か優れたものがあるのならまだしも、せいぜい努力をした結果、貴族学校の成績がそれなりに優秀程度のものしか恵まれなかった。
これが努力せずともできるとか、飛び抜けた何かがあって、学校レベルを超えていたとかならば、活路があったのかもしれないが、私はせめて勉強だけでも頑張ろうと必死に努力した結果が、成績が上位レベル、しかも飛び抜けたものは無し、ということであった。
ようは凡人だったのだ。
容姿は駄目、能力も平凡、家柄こそ侯爵家だが、貴族と付き合う以上、相手も貴族なわけで、アドバンテージにはならない。
流石に下位貴族の人は私に気を使うのですが、家が凄いだけである。
つまり私の人生は詰んだのだ。
私は小さい頃に、知らない貴族令息に「うわーあいつ不細工だなー」みたいなことを言われたことがあった。
その時は物凄く落ち込んだ。
しかし長じてから考えると、私がその子に迫ったのならまだしも、ただ関係無い所にいただけである。関係無い所にいるブスなど、関係無いのだから無視すればいいのだ。
つまりそんなことをわざわざ言う奴は馬鹿なのである。
馬鹿が言うことを気にしてどうするんだ!
そう思って開き直って勉強をしたのに、何てことだろうか。
さらに私も年ごろの娘になりつつある。
つまりだ、婚約をする時期なのだが、私の容姿がアレなことで、お父様も婚約先に頭を抱えている。
お母様は悲しそうな顔をして言う……
「ジュリア、お父様も一生懸命うちに相応しい相手を探しているけど、最悪子爵家男爵家が相手になることを覚悟しなさい!」と
ようは、私の引き取り先は下位貴族が侯爵家と繋がれるからって理由でしか結婚してもらえないことを、暗に言って来たということである……
そんな理由の所に結婚しても幸せになれるとは思えないが、せめていい人ならば……そう思っていたら、お父様から呼ばれた……
「ジュリア、嫌かもしれないが男爵家の三男である、ロバートならば婚約に応じていいとのことだ、会ってみるか?」
はは……お姉様は綺麗だということで、公爵家の方に見初められたのに、同じ両親から生まれた私が……
しかし悲しい気持ちを抑え、お父様が一生懸命探してくれたことに感謝をして、応じることにした……
男爵家が歓迎してくれるということで、迎えの馬車に乗りたどり着くと……
男爵夫婦が申し訳なさそうに謝罪をしてくる……
「ジュリア様よくいらっしゃいました、今ロバートが少し準備が遅れていますので、少しだけお待ちください、こちらにお菓子の用意がしてあります、お口に合いますかどうか……」
きっと侯爵家にあるような豪華なものなど出せないという意味なのだろうが、私は気遣われていることが嬉しくて、
「いいえ、大変ありがとうございますわ」と言って、おいしそうにお菓子を食べることにした。
そしてロバートがやってきたのだが、露骨に不機嫌そうであり、
「……いくら侯爵家だからってこれは無いんじゃないか?」
といきなり言ってくるでは無いか……
男爵がブチ切れて「何を寝言を言っている!」と息子を叱りつけても
「父上こそ考えて下さいよ、侯爵家からこんなブスでお菓子モグモグ食べるだけのアホ女を押し付けられていますよ、いくら何でも恥を知れって言いたいですね!」
「なんてことを言うの!」
男爵夫人も息子を𠮟りつけるも、私はいくら何でもこの人と結婚だけはしたく無いと思った。
別に恩を着せたいわけではないけど、お菓子を食べたのは、気を使って下さった男爵家への配慮であって、私が食い意地を張ったわけではないと言うのに……
「申し訳ありません!」と男爵夫婦のお二人が頭を下げた時に、私は不意に涙が溢れてきた……
どうしてここまで言われないといけないのだろうか?
私がロバート様に何をしたと言うのだろうか?
さらにロバートは、「ブスが結婚しようなんて甘いんだよ!」
何て暴言を吐くので、流石に私は嫌になり席を立って帰った……
向こうでは叱られまくるロバート達の声が聞こえたが知った事では無い……
家に帰った時に、お父様がブチ切れるといけないので、私は涙を隠して、
「この婚約お断りだけして下さい」とだけ告げた。
お父様は深く聞かずに「そうか」とだけ。
多分男爵家では嫌だったのだろうみたいな、私のワガママに取ったのかもしれないが、もしもロバートの態度が悪すぎたことを知ったら、お父様は激怒して男爵家に圧力をかけるに違いないから。
ロバートは確かに酷いと思うが、男爵家そのものが酷いと思わなかったので、そこまで大ごとにしたいわけでは無いのだ……
ちなみに後日聞いた所、ロバートは付き合っている平民の女がいたらしく、そいつと結婚したかったのだが両親には反対されてどうたらみたいなことがあったらしく、ついに勘当された上に、平民の女にも捨てられたそうだ。
その平民の女が良かったのは分かるけど、だからって私に当たらないで欲しいし、勘当されたら捨てられた時点で、愛なんて無かったのよ……
そう言う意味で、いくら何でもつまらない男と結婚しなくていいのは良かったが、私はあまりにも惨めな気持ちになった。
どうして?どうしてたった容姿が悪いだけで、あそこまで全否定されないといけないのか!
何か妙な怒りのスイッチが入った。
皮肉にもロバートとかいう救いが無い男にバカにされたからこそ、怒りのスイッチが入った。あそこまで低レベル扱いされるいわれは無い的な意味で……!
私は絶対に美しくなってやる、そのためには何でもすると誓った。
そして私がまず取った行動はこれだ!
私と同い年に私達の世代の令嬢みんなが憧れるオシャレの象徴みたいな公爵令嬢のキャサリン様がいる。
キャサリン様の周りには、いつも令嬢達がいて、強烈に恥ずかしいのだが、私は意を決してキャサリン様に近づく!
「キャサリン様お楽しみの所失礼します、侯爵家のジュリアです」
「……どうしたの?ジュリアさん」
今までほとんど話したことが無い私が話しかけたので、少し驚かれた顔をしたが、
「わ……私、綺麗になりたいんです、どうかキャサリン様のオシャレ術を、私に教えてください、お願いします!」
最後は涙が流れながら頼んだ!
周りの令嬢達は明らかに私に冷笑を浮かべているが、
まぁ私のようなブスが何を言ってるだの、いきなり何恥ずかしいことを頼んでいるだだの、そういうのは分かる。
だが私は、何でもやると言ったのだ!恥もクソも無い!
「……よく分からないけど、事情がありそうね、いいわよ、明日私の家に来なさい!」
「ええ!?」
周りの令嬢に驚かれたけど、キャサリン様は……
「いいこと?私は甘やかす気が一切無いから、甘ったれたことを言うのなら即帰ってもらうから!」
こうして私はキャサリン様にオシャレを教えてもらえることになったのであった……
翌日キャサリン様の公爵家へと向かい、キャサリン様に聞かれる。
「言っちゃ悪いけど、貴女オシャレとは無縁だったわよね?なぜ急に?」
私はロバートというつまらない身分も低い男にブスと言うだけで馬鹿にされて、あまりにも悔しくて許せなくて、綺麗になりたくなったことを伝えた。
ロバートがつまらない男だったからこそ、余計に腹が立ったのだ!
「……分かったわよ、じゃあ私が応じた理由も教えてあげるから、泣かないでね」
「え?」
何を言うのかと思ったら、
「言っちゃ悪いけど、貴女も自分が認めるように、ハッキリ言って、素材としてはブスよ、でもね、だからこそ、私のオシャレ術にかかれば、綺麗になれる、それを証明するいい機会だと思ったからこそ、教えることにしたの、こんな動機でいいかしら?」
……なるほどキャサリン様もただ教えて下さるほど甘く無いことは当然なので、私がうなづくと……
「よほどそのロバートってのに馬鹿にされたのが悔しいようね、ここまで私に言われてもめげないってことは、じゃあついてくることを期待するわ!」
こうしてキャサリン様の膨大な知識から来る、さまざまなオシャレを教わることになった。
まずキャサリン様が言うには、
「とりあえず内面の優雅さが大事みたいな精神論は捨てて、何故ならそれが本当にできる人ならばそもそも何を着たって美しいことになれるのよ、でもそんな上等な女性は、歴史的な人しかいない、私も含めて、ほとんどのものがそうはなれないからこそ、オシャレをするのでしょう?だから内面が美しい私みたいな言い訳はやめなさい!」
……何て言うか逆に言い訳を許さないキャサリン様の厳しさを感じた!
「そして内面みたいな言い訳をしないのであれば、後は徹底的にどうすれば美しく見えるのか、自己満足では無くて、他者がどう思うのか、これは流行を追えば良いってものでは無いわ、他人から見えるいい自分が何であるかを探す作業で、1人1人違うのよ!」
……私がなんて答えればいいか困っていると……
「ハッキリ言ってあなたの素材は悪い、だから適当なオシャレでは綺麗に見える貴女はできないわよ、だからこそ、必死に綺麗に見える貴女を探しなさい!そのために、どのオシャレが合うのか、私も一緒に探すから、貴女も逃げないこと、分かったわね!」
「は……はい!」
こうしてキャサリン様の家に何度も何度も通い、私が何がいいのかを徹底的に探すことになった。
個人的には私は「これなら今までの私よりも綺麗そう」みたいな満足を示しても、キャサリン様は、
「この程度そこらにいる令嬢と何も変わらないじゃない!この私が関わっている以上そんな甘えたことでどうするの!それに貴女は綺麗になりたいんじゃないの!?」
などと叱られ、鬼のように厳しいと、私もある意味泣きたくなったが、キャサリン様の言うことがもっともすぎて、頑張ってついていくことにした……
ある日私は自分なりにこれならばと思うオシャレの組み合わせを感じた。しかしキャサリン様は……
「駄目ね!」とバッサリ……
「どうしてですか?私はこれでいいと思うのですが……」
「オシャレってのは自己満足のためにやるんじゃないの、その程度で綺麗になれたと思うの?あんた舐めてるの?」
「……でも今までの私を思えば十分なのですが……」
「何志の低いことを言ってるのよ!いい?オシャレの究極の目標は、誰であっても綺麗になれる、それなのよ、だから素材が悪いと難易度が上がることは認めても、ブスだから綺麗になれない、これはオシャレの敗北なのよ!貴女の綺麗になりたいはその程度だったの?それならもういいわ、出て行きなさい!」
私はキャサリン様のあまりの厳しさに泣きだしてしまったが、キャサリン様は……
「泣けばいいってものではないわ、最初に言ったわよね?私は一切甘やかさないと!」
「そうでした、すみませんでした!」
私は反省するも、やはりこの日は落ち込んだ……
キャサリン様はオシャレの勝利を確信しているけど、私は自分がブスなことはよく知っている、本当に私がキャサリン様も太鼓判を押す綺麗になれるのだろうか?
そう思っていると、キャサリン様のお兄様である、ラファエル様が私に声をかける。
「キャサリンはオシャレに人生を賭けているからな、どうしてそうなったのかは分からないが……」
「キャサリン様凄いですよね……」
「いや……あのキャサリンのワガママについていける君も凄いと思うよ、頑張っている……」
「ありがとうございます!」
私はラファエル様に励まされて嬉しかった……
そしてさらに何度も通った結果、
キャサリン様も「これよ、この組み合わせが、貴女の綺麗を一番作れるのよ!」
とついに太鼓判を押してくれたのだ……
これが私?
正直言うと、私からすると、ある程度以上綺麗だと後は全部綺麗にしか見えないので、そこまで違いが分からないのだが、キャサリン様に認められたことが嬉しくて、涙が出てきたのであった……
「……よく頑張ったわね、私が貴女の綺麗を保証するわ!」
こうして私は社交場に現れた……
私に変わりっぷりに、みんな驚いたようで声も出ない感じなのだが、
何か酔っ払った貴族令息に絡まれた……
というかこの人、昔私を多分ブスだと言った人……
「はん、ブスは何をしたってブスなんだよ!」
などと私を侮辱して、さらに、
「ブスがオシャレをして綺麗に見せるなんて詐欺なんだよ詐欺!」
このように私を馬鹿にして来るでは無いか!
私は「仮に私がブスだったとしても貴方に迷惑だったのですか?」
と怒りのあまり聞き返したが、
「うるさいな、ブスの存在が迷惑なんだよ、美しくねぇ!」
と来たものだ、しかしそこにキャサリン様が現れて、
「どの口がそんなことを言えるのかしら?貴方の素材もたいしたこと無い上に、服だってダッサダサ、1つ1つはブランド品のつもりなんだろうけど、組み合わせがなっていませんわ、さらに着方も下手くそ、それで良く他人の事を言えたものよね」
「何だと!?」
といいつつも、相手がキャサリン様と知って、卑屈になるこいつ……
だが……
「うるせぇ男はいいんだよ男は、女でブスは生きる資格無し!」
こんなことを言い出すとラファエル様が現れて言う……
「そうか?だが私はずっとキャサリンの元で頑張ってきたジュリア嬢は美しいと思うぞ?」
と仰って下さる……
「な……!?」
と驚くこいつだが、
「じゃあ、このブスと付き合えるのか!?」などと酔いに任せて挑発するでは無いか!
するとラファエル様は……
「そうだな……私は後継者でもないから自由もきくし、まだ婚約者もおらず、侯爵家ならば父上も問題にすまい、ということでジュリア嬢、私と婚約して欲しい!」
などとプロポーズをするでは無いか!
あまりなことに私は茫然とするも、
一番恥ずかしそうにしていたのは酔っ払い男で、ここまでラファエル様に全否定されては、居場所も無くなり逃げて行った。
聞いた話では酒癖が悪くて、今回の件もあって、ついに勘当されたらしい。
私はというと、ラファエル様に「私のようなものでいいのでしょうか?」
「オシャレした君は綺麗だと思うし、何よりも内面もいいと思ったからさ、私では嫌かな?」などと言って下さったので喜んで応じた。
キャサリン様はというと「まさか私のオシャレ研究から、お兄様の婚活になるとは予想できませんでしたわ」と仰る。
しかしキャサリン様は厳しく「毎回同じ服を着るわけにはいかないので、今回のを参考に、バリエーションを増やさないと駄目よ!」とダメ出し!
ある意味一番怖いのは義妹になるキャサリン様だよと思いながら、私は幸せになれそうと思うのであった……!
ならばと、何か優れたものがあるのならまだしも、せいぜい努力をした結果、貴族学校の成績がそれなりに優秀程度のものしか恵まれなかった。
これが努力せずともできるとか、飛び抜けた何かがあって、学校レベルを超えていたとかならば、活路があったのかもしれないが、私はせめて勉強だけでも頑張ろうと必死に努力した結果が、成績が上位レベル、しかも飛び抜けたものは無し、ということであった。
ようは凡人だったのだ。
容姿は駄目、能力も平凡、家柄こそ侯爵家だが、貴族と付き合う以上、相手も貴族なわけで、アドバンテージにはならない。
流石に下位貴族の人は私に気を使うのですが、家が凄いだけである。
つまり私の人生は詰んだのだ。
私は小さい頃に、知らない貴族令息に「うわーあいつ不細工だなー」みたいなことを言われたことがあった。
その時は物凄く落ち込んだ。
しかし長じてから考えると、私がその子に迫ったのならまだしも、ただ関係無い所にいただけである。関係無い所にいるブスなど、関係無いのだから無視すればいいのだ。
つまりそんなことをわざわざ言う奴は馬鹿なのである。
馬鹿が言うことを気にしてどうするんだ!
そう思って開き直って勉強をしたのに、何てことだろうか。
さらに私も年ごろの娘になりつつある。
つまりだ、婚約をする時期なのだが、私の容姿がアレなことで、お父様も婚約先に頭を抱えている。
お母様は悲しそうな顔をして言う……
「ジュリア、お父様も一生懸命うちに相応しい相手を探しているけど、最悪子爵家男爵家が相手になることを覚悟しなさい!」と
ようは、私の引き取り先は下位貴族が侯爵家と繋がれるからって理由でしか結婚してもらえないことを、暗に言って来たということである……
そんな理由の所に結婚しても幸せになれるとは思えないが、せめていい人ならば……そう思っていたら、お父様から呼ばれた……
「ジュリア、嫌かもしれないが男爵家の三男である、ロバートならば婚約に応じていいとのことだ、会ってみるか?」
はは……お姉様は綺麗だということで、公爵家の方に見初められたのに、同じ両親から生まれた私が……
しかし悲しい気持ちを抑え、お父様が一生懸命探してくれたことに感謝をして、応じることにした……
男爵家が歓迎してくれるということで、迎えの馬車に乗りたどり着くと……
男爵夫婦が申し訳なさそうに謝罪をしてくる……
「ジュリア様よくいらっしゃいました、今ロバートが少し準備が遅れていますので、少しだけお待ちください、こちらにお菓子の用意がしてあります、お口に合いますかどうか……」
きっと侯爵家にあるような豪華なものなど出せないという意味なのだろうが、私は気遣われていることが嬉しくて、
「いいえ、大変ありがとうございますわ」と言って、おいしそうにお菓子を食べることにした。
そしてロバートがやってきたのだが、露骨に不機嫌そうであり、
「……いくら侯爵家だからってこれは無いんじゃないか?」
といきなり言ってくるでは無いか……
男爵がブチ切れて「何を寝言を言っている!」と息子を叱りつけても
「父上こそ考えて下さいよ、侯爵家からこんなブスでお菓子モグモグ食べるだけのアホ女を押し付けられていますよ、いくら何でも恥を知れって言いたいですね!」
「なんてことを言うの!」
男爵夫人も息子を𠮟りつけるも、私はいくら何でもこの人と結婚だけはしたく無いと思った。
別に恩を着せたいわけではないけど、お菓子を食べたのは、気を使って下さった男爵家への配慮であって、私が食い意地を張ったわけではないと言うのに……
「申し訳ありません!」と男爵夫婦のお二人が頭を下げた時に、私は不意に涙が溢れてきた……
どうしてここまで言われないといけないのだろうか?
私がロバート様に何をしたと言うのだろうか?
さらにロバートは、「ブスが結婚しようなんて甘いんだよ!」
何て暴言を吐くので、流石に私は嫌になり席を立って帰った……
向こうでは叱られまくるロバート達の声が聞こえたが知った事では無い……
家に帰った時に、お父様がブチ切れるといけないので、私は涙を隠して、
「この婚約お断りだけして下さい」とだけ告げた。
お父様は深く聞かずに「そうか」とだけ。
多分男爵家では嫌だったのだろうみたいな、私のワガママに取ったのかもしれないが、もしもロバートの態度が悪すぎたことを知ったら、お父様は激怒して男爵家に圧力をかけるに違いないから。
ロバートは確かに酷いと思うが、男爵家そのものが酷いと思わなかったので、そこまで大ごとにしたいわけでは無いのだ……
ちなみに後日聞いた所、ロバートは付き合っている平民の女がいたらしく、そいつと結婚したかったのだが両親には反対されてどうたらみたいなことがあったらしく、ついに勘当された上に、平民の女にも捨てられたそうだ。
その平民の女が良かったのは分かるけど、だからって私に当たらないで欲しいし、勘当されたら捨てられた時点で、愛なんて無かったのよ……
そう言う意味で、いくら何でもつまらない男と結婚しなくていいのは良かったが、私はあまりにも惨めな気持ちになった。
どうして?どうしてたった容姿が悪いだけで、あそこまで全否定されないといけないのか!
何か妙な怒りのスイッチが入った。
皮肉にもロバートとかいう救いが無い男にバカにされたからこそ、怒りのスイッチが入った。あそこまで低レベル扱いされるいわれは無い的な意味で……!
私は絶対に美しくなってやる、そのためには何でもすると誓った。
そして私がまず取った行動はこれだ!
私と同い年に私達の世代の令嬢みんなが憧れるオシャレの象徴みたいな公爵令嬢のキャサリン様がいる。
キャサリン様の周りには、いつも令嬢達がいて、強烈に恥ずかしいのだが、私は意を決してキャサリン様に近づく!
「キャサリン様お楽しみの所失礼します、侯爵家のジュリアです」
「……どうしたの?ジュリアさん」
今までほとんど話したことが無い私が話しかけたので、少し驚かれた顔をしたが、
「わ……私、綺麗になりたいんです、どうかキャサリン様のオシャレ術を、私に教えてください、お願いします!」
最後は涙が流れながら頼んだ!
周りの令嬢達は明らかに私に冷笑を浮かべているが、
まぁ私のようなブスが何を言ってるだの、いきなり何恥ずかしいことを頼んでいるだだの、そういうのは分かる。
だが私は、何でもやると言ったのだ!恥もクソも無い!
「……よく分からないけど、事情がありそうね、いいわよ、明日私の家に来なさい!」
「ええ!?」
周りの令嬢に驚かれたけど、キャサリン様は……
「いいこと?私は甘やかす気が一切無いから、甘ったれたことを言うのなら即帰ってもらうから!」
こうして私はキャサリン様にオシャレを教えてもらえることになったのであった……
翌日キャサリン様の公爵家へと向かい、キャサリン様に聞かれる。
「言っちゃ悪いけど、貴女オシャレとは無縁だったわよね?なぜ急に?」
私はロバートというつまらない身分も低い男にブスと言うだけで馬鹿にされて、あまりにも悔しくて許せなくて、綺麗になりたくなったことを伝えた。
ロバートがつまらない男だったからこそ、余計に腹が立ったのだ!
「……分かったわよ、じゃあ私が応じた理由も教えてあげるから、泣かないでね」
「え?」
何を言うのかと思ったら、
「言っちゃ悪いけど、貴女も自分が認めるように、ハッキリ言って、素材としてはブスよ、でもね、だからこそ、私のオシャレ術にかかれば、綺麗になれる、それを証明するいい機会だと思ったからこそ、教えることにしたの、こんな動機でいいかしら?」
……なるほどキャサリン様もただ教えて下さるほど甘く無いことは当然なので、私がうなづくと……
「よほどそのロバートってのに馬鹿にされたのが悔しいようね、ここまで私に言われてもめげないってことは、じゃあついてくることを期待するわ!」
こうしてキャサリン様の膨大な知識から来る、さまざまなオシャレを教わることになった。
まずキャサリン様が言うには、
「とりあえず内面の優雅さが大事みたいな精神論は捨てて、何故ならそれが本当にできる人ならばそもそも何を着たって美しいことになれるのよ、でもそんな上等な女性は、歴史的な人しかいない、私も含めて、ほとんどのものがそうはなれないからこそ、オシャレをするのでしょう?だから内面が美しい私みたいな言い訳はやめなさい!」
……何て言うか逆に言い訳を許さないキャサリン様の厳しさを感じた!
「そして内面みたいな言い訳をしないのであれば、後は徹底的にどうすれば美しく見えるのか、自己満足では無くて、他者がどう思うのか、これは流行を追えば良いってものでは無いわ、他人から見えるいい自分が何であるかを探す作業で、1人1人違うのよ!」
……私がなんて答えればいいか困っていると……
「ハッキリ言ってあなたの素材は悪い、だから適当なオシャレでは綺麗に見える貴女はできないわよ、だからこそ、必死に綺麗に見える貴女を探しなさい!そのために、どのオシャレが合うのか、私も一緒に探すから、貴女も逃げないこと、分かったわね!」
「は……はい!」
こうしてキャサリン様の家に何度も何度も通い、私が何がいいのかを徹底的に探すことになった。
個人的には私は「これなら今までの私よりも綺麗そう」みたいな満足を示しても、キャサリン様は、
「この程度そこらにいる令嬢と何も変わらないじゃない!この私が関わっている以上そんな甘えたことでどうするの!それに貴女は綺麗になりたいんじゃないの!?」
などと叱られ、鬼のように厳しいと、私もある意味泣きたくなったが、キャサリン様の言うことがもっともすぎて、頑張ってついていくことにした……
ある日私は自分なりにこれならばと思うオシャレの組み合わせを感じた。しかしキャサリン様は……
「駄目ね!」とバッサリ……
「どうしてですか?私はこれでいいと思うのですが……」
「オシャレってのは自己満足のためにやるんじゃないの、その程度で綺麗になれたと思うの?あんた舐めてるの?」
「……でも今までの私を思えば十分なのですが……」
「何志の低いことを言ってるのよ!いい?オシャレの究極の目標は、誰であっても綺麗になれる、それなのよ、だから素材が悪いと難易度が上がることは認めても、ブスだから綺麗になれない、これはオシャレの敗北なのよ!貴女の綺麗になりたいはその程度だったの?それならもういいわ、出て行きなさい!」
私はキャサリン様のあまりの厳しさに泣きだしてしまったが、キャサリン様は……
「泣けばいいってものではないわ、最初に言ったわよね?私は一切甘やかさないと!」
「そうでした、すみませんでした!」
私は反省するも、やはりこの日は落ち込んだ……
キャサリン様はオシャレの勝利を確信しているけど、私は自分がブスなことはよく知っている、本当に私がキャサリン様も太鼓判を押す綺麗になれるのだろうか?
そう思っていると、キャサリン様のお兄様である、ラファエル様が私に声をかける。
「キャサリンはオシャレに人生を賭けているからな、どうしてそうなったのかは分からないが……」
「キャサリン様凄いですよね……」
「いや……あのキャサリンのワガママについていける君も凄いと思うよ、頑張っている……」
「ありがとうございます!」
私はラファエル様に励まされて嬉しかった……
そしてさらに何度も通った結果、
キャサリン様も「これよ、この組み合わせが、貴女の綺麗を一番作れるのよ!」
とついに太鼓判を押してくれたのだ……
これが私?
正直言うと、私からすると、ある程度以上綺麗だと後は全部綺麗にしか見えないので、そこまで違いが分からないのだが、キャサリン様に認められたことが嬉しくて、涙が出てきたのであった……
「……よく頑張ったわね、私が貴女の綺麗を保証するわ!」
こうして私は社交場に現れた……
私に変わりっぷりに、みんな驚いたようで声も出ない感じなのだが、
何か酔っ払った貴族令息に絡まれた……
というかこの人、昔私を多分ブスだと言った人……
「はん、ブスは何をしたってブスなんだよ!」
などと私を侮辱して、さらに、
「ブスがオシャレをして綺麗に見せるなんて詐欺なんだよ詐欺!」
このように私を馬鹿にして来るでは無いか!
私は「仮に私がブスだったとしても貴方に迷惑だったのですか?」
と怒りのあまり聞き返したが、
「うるさいな、ブスの存在が迷惑なんだよ、美しくねぇ!」
と来たものだ、しかしそこにキャサリン様が現れて、
「どの口がそんなことを言えるのかしら?貴方の素材もたいしたこと無い上に、服だってダッサダサ、1つ1つはブランド品のつもりなんだろうけど、組み合わせがなっていませんわ、さらに着方も下手くそ、それで良く他人の事を言えたものよね」
「何だと!?」
といいつつも、相手がキャサリン様と知って、卑屈になるこいつ……
だが……
「うるせぇ男はいいんだよ男は、女でブスは生きる資格無し!」
こんなことを言い出すとラファエル様が現れて言う……
「そうか?だが私はずっとキャサリンの元で頑張ってきたジュリア嬢は美しいと思うぞ?」
と仰って下さる……
「な……!?」
と驚くこいつだが、
「じゃあ、このブスと付き合えるのか!?」などと酔いに任せて挑発するでは無いか!
するとラファエル様は……
「そうだな……私は後継者でもないから自由もきくし、まだ婚約者もおらず、侯爵家ならば父上も問題にすまい、ということでジュリア嬢、私と婚約して欲しい!」
などとプロポーズをするでは無いか!
あまりなことに私は茫然とするも、
一番恥ずかしそうにしていたのは酔っ払い男で、ここまでラファエル様に全否定されては、居場所も無くなり逃げて行った。
聞いた話では酒癖が悪くて、今回の件もあって、ついに勘当されたらしい。
私はというと、ラファエル様に「私のようなものでいいのでしょうか?」
「オシャレした君は綺麗だと思うし、何よりも内面もいいと思ったからさ、私では嫌かな?」などと言って下さったので喜んで応じた。
キャサリン様はというと「まさか私のオシャレ研究から、お兄様の婚活になるとは予想できませんでしたわ」と仰る。
しかしキャサリン様は厳しく「毎回同じ服を着るわけにはいかないので、今回のを参考に、バリエーションを増やさないと駄目よ!」とダメ出し!
ある意味一番怖いのは義妹になるキャサリン様だよと思いながら、私は幸せになれそうと思うのであった……!


