「あ、葵………」
「ん?」
「は、離れて……っ…」
「無理。」
彼の腕の中からすり抜けようと、必死に身をよじってみる。けれど────。
「逃げんなよ」
そんな抵抗は虚しく、甘い囁きが鼓膜を揺らし……腰にまわる手にグッと力が入った。
「お前は………俺の、だろ?」
さっきよりもさらに近づく距離。
"距離"なんていう概念が無いんじゃないかってほど密着する葵に、私は内心ドキドキする胸を隠すのに必死だった。
この様子じゃ、今やこんなに甘い声を出している葵が、数日前までは"冷徹"で知られていた最強若頭なんて……想像も出来ない。
(────顔、絶対赤いだろうな。)
抵抗するのをあきらめ、素直に身を任せた私の頭を、葵の大きな手が優しく包み込む。
細いく角張った指先が、愛おしそうに私の髪をさらさらと梳いていく。
────その心地よさに身を任せ、私はそっと瞳を閉じた。



