あなたの小説を売ってください


『やろうよ麻希!お願い!もしウィルスに感染したら私のパソコン貸してあげるから!』


スマホを置き、両手を顔の前で合わせて乙葉が私に頼み込む。

その一生懸命さに背中を押され、私はようやく決断した。

マウスに手を添えて、サイトをクリックする。

その様子が見えるように左手でスマホを持ち、パソコンにレンズを向けた。

これで乙葉もスマホ越しに画面を見られるだろう。


『やってくれたの…!?ありがと麻希!』


「ふふ、ウィルスだったら本当にパソコンもらっちゃうからね」


『“貸す”んだってば!』


乙葉との会話で緊張が僅かに緩む。

読み込みに少しの時間がかかった後…サイトが表示された。

そこには白い背景に淡々と黒い文字が並んでいる。

書かれてあるのは…質問文。


“あなたは小説を書きますか?”

“その小説を私共に売ってくださりますか?”


そして、最後に。


“イエスの方はこちらから案内に従って必要事項を打ち込んで送信してください”


黒い下向きの矢印の先には“必要事項項目”と書かれたリンクが貼られている。


『アタシがメモしたやつには、そのリンクに飛ぶって書いてる…やってみて』


「分かった」


必要事項項目と書かれたリンクをクリックする。

手のひらに滲んだ汗がマウスを濡らしていた。