あなたの小説を売ってください


「私達が何かこう…できる事でお金をもらえたらいいのにね」


「家の手伝いをしてお小遣い増やしてもらう…みたいな?」


「うーん、やっぱりそれしかないのかな…」


地道にお小遣いを貯めて、一冊二冊の小説を買う。

それが現実的な方法で、それこそ小説の中みたいに空からお金が降ってくるような…そんな楽なお金の増やし方なんてこの世にはないんだろう。

ぐぐっと背伸びをする。

青い空に浮かぶフワフワな雲がゆっくりと動いていくのが見えた。

そろそろ教室に戻らないといけない。

隣の乙葉に声をかけようとした時、タイミングよくこちらを振り返った彼女と目が合った。


「麻希ってさ…“小説買取人”って知ってる?」


「小説買取人…?何それ?」


初めて聞く単語に私は眉をひそめた。

乙葉が私の腕を引いて、その口元を近づける。


「都市伝説みたいなウワサ話だよ。前にね、ホラー小説の題材を探してる時にオカルトスレで見つけたの」


「…どんなウワサなの?危ない話じゃないよね…」


「それがさ、書き込みを見てたら小説買取人に会ったっていう人が一人いたんだよ…詳しい手順も書いてて…面白そうだったからメモしておいたんだ」


乙葉が明るい声で私の鼓膜を震わせた。

喜々としてウワサ話について語る乙葉の様子を見ているとなんだか背中がゾクリとして、不安な気持ちになる。

ウワサはウワサだ。

書き込みだって、本当の事を書いているかどうか…。

不確定な小説買取人の存在…どうにも不信感から信用できずにいた。

私は息を飲み、乙葉との会話を終わらせようと口を開いて___。