あなたの小説を売ってください


最初は読む専門だったけど…。

小説について話していくうちに自分達でも小説を書いていくようになり、気づけば私と乙葉はお互いのファン第一号になっていった。


「ねぇ、その小説も“のべりぃ”に投稿するの?」


「うん、そのつもり」


「投稿する前に連絡してよ!アタシが“まき。”先生の読者第一号なんだからね!感想もいいねもアタシが最初にするんだから」


「うん、分かった。いつもありがとう、乙葉」


“のべりぃ”とは私と乙葉が利用している小説投稿サイトの事。

私は“まき。”という名前を、乙葉は“OTOHA”という名前をペンネームにして小説を投稿している。

読み終えたお互いの作品に感想を送り合うのが恒例になっていた。


「このシーンを変更して…後は…」


画面をタップしながら物語の終わりに向けてラストスパートをかける。

数分後に小説は完成したけど、誤字や脱字が無いか確認してから投稿したい。

まだ乙葉には言わないでおこう。

そっとスマホの電源を落として制服のポケットにしまう。

乙葉は食べ終えたお弁当を片づけながら不意に「あっ」と呟いた。


「どうしたの?」


尋ねると肩を落として乙葉が声を絞り出す。


「今日って5月10日だよね?欲しい小説の発売日じゃん…最悪」


「なんで最悪なの?」


「まだお小遣いが貯まってないから買えないの!」


「あ~…」


私は苦笑した。

それは悲しい理由だ…。


「もう!なんでうちの高校バイト禁止なの!?一年の頃からバイトやれてれば、今それなりにお金も貯まってたはずなのに!」


乙葉の声が辺りに響き渡って少し恥ずかしい。

でも確かにバイトができれば自由に使えるお金が増えて、その分小説もたくさん買えたのにって二年生に進級した今、私も強く思う。

読みたい本がありすぎて、お小遣いだけじゃとても足りない。