あなたの小説を売ってください


まだ会っていないから、どんな人なのか分からない。

そもそも本当に素人の書いた小説を、お金と交換してもらえるかどうかも不確かだ。

完全にこのウワサ話を信じたわけではないけど…胸には期待からの高揚感が広がっていく。

だってもし、これが本当なら…夢のある話だ。

小説を書く事が好きな私達からすれば、自由に書いた作品を差し出すだけでお金がもらえるなんて…そんな幸せなお金の稼ぎ方なんてない。


『締め切りは一ヶ月後かぁ…どんな小説にしようかな~、麻希は決めた?』


「そうだね…私は___」


乙葉と小説のネタ出しをしながら、頭の片隅で考える。

会ってみて、怖そうな人なら大声を出して逃げちゃえばいい。

待ち合わせ場所は人の多い駅なんだから。

大丈夫…大丈夫だよね。

得体の知れない小説買取人。

そんな存在への恐怖心は、もう薄れてしまっていた。


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