あなたの小説を売ってください


やった…。

押しちゃった。

そっと目を開けると…そこには“送信完了”の文字が浮かんでいた。

私は椅子の背もたれにガクリと体重をかける。

体中から力が抜けていく気がした。

自分で思っているよりもはるかに緊張していたらしい。


『麻希お疲れさま~!やったね、後は小説を書いて持っていくだけじゃん…!』


はしゃいだ様子の乙葉の言葉にスマホを自分に向ける。

画面越しに目を合わせた乙葉が私を見て大きく息を吐いた。


「もしかして乙葉も緊張してた?」


『そりゃ少しはね。だって小説買取人と…都市伝説と繋がったんだよ!』


「うん、まだ信じられないよ。…ねぇ小説、どんな紙に書いてもいいのかな?リングノートなら使ってないのいっぱいあるんだけど」


私はスマホを机の引き出しに向けた。

その中には色とりどりのリングノートがパッケージに入ったまま大量に眠っていた。

小説もだけど、こういうノート系も可愛いのはすぐに買っちゃうから金欠なんだろうな…。

そのくせ使うのがもったいなくて日の目を見ずにこうして引き出しの肥やしになっている。


『わ、また増えてるね。その一番右のやつ可愛いかも』


「最近またお店で買っちゃって…こんな時に使わないとだよね」


『うん、いいんじゃない?“小説は原稿用紙に書くべし”なんて載ってなかったし?』


こてんと首を傾げた乙葉に「だよね」と返す。

引き出しの中からお気に入りのデザインのノートを一冊取り出し、そのパッケージに触れた。

ふと、つけっぱなしだったパソコンの画面を見る。

取りあえず、小説買取人のサイトは実在していた。

だけど…。