君と終わった街で

昔の洸太なら、もっと分かりやすかった。

“会いたい”も。

“好き”も。

全部、真っ直ぐすぎるくらい伝わってきていた。

でも今の洸太は違う。

ちゃんと距離を取っている。

自分を押しつけてこない。

だから安心できる。

……なのに。

時々こうして、不意に心を揺らしてくる。

文姫はスマホを見つめたまま、小さく息を吐く。

『私も』

短く返す。

送ったあと、少しだけ胸が落ち着かなかった。

まるで高校生みたいだ、と思う。

たった数文字で、こんなに感情が動くなんて。

その時、スマホの時計が目に入る。

もう出ないと遅刻する時間だった。

文姫は慌てて立ち上がる。

洗面所。

薄く化粧をして。

髪を整えて。

鏡の中の自分を見る。

二十八歳。

高校生だった頃とは、当然顔も変わった。

疲れた顔をしている日も増えた。

でも。

洸太と再会してから、少しだけ表情が柔らかくなった気がする。

それが、なんとなく悔しかった。

「……ほんと、何なんだろ」

小さく呟く。

恋愛なんて、もう面倒だと思っていた。

誰かを好きになるのも。

期待するのも。

傷つくのも。

全部、疲れるだけだと思っていたのに。

どうして洸太と話していると、こんなに安心するんだろう。

高校の頃。

自分は、洸太を“恋愛として見れない”と言った。

それは本心だった。

でも今。

“本当は恋愛じゃない”とも言い切れない自分がいる。

その曖昧さが、少し怖かった。