君と終わった街で

その時、またスマホが震える。

『そういえば』

『洸太って今彼女いるの?』

洸太の視線が止まった。

部屋の空気が、一瞬だけ静かになる。

窓の外では、遠くを走る車の音が聞こえていた。

洸太はスマホを見つめたまま、すぐには返事ができなかった。

洸太はスマホを見つめたまま、しばらく動けなかった。

『洸太って今彼女いるの?』

その一文だけが、やけに鮮明に浮かび上がって見える。

なんでそんなこと聞くんだろう。

ただの世間話かもしれない。

十年ぶりに再会した相手との、普通の会話。

きっとそれだけだ。

……なのに、勝手に意味を考えてしまう。

洸太は小さく息を吐いて、ソファに深く座り直した。

昔からそうだった。

文姫の言葉ひとつで、簡単に心が揺れる。

十年経っても、結局そこは変わっていないのかもしれない。

『いない』

短く返す。

送ったあと、少しだけ迷って、

『文姫は?』

と打ちかける。

でも、指が止まった。

聞いていいのか分からなかった。

結婚している可能性だってある。

恋人がいるかもしれない。

それを聞いて、もし平気じゃなかったら。

そこまで考えて、洸太は苦笑する。

何を怖がってるんだ、と思う。

高校生じゃあるまいし。

けれど、怖かった。

文姫がもう、自分の知らない誰かの隣にいる現実を、ちゃんと突きつけられるのが。

結局、打ちかけた文章を消す。

数秒後。

既読がついた。

そして。

『そっか』

それだけ。

洸太は画面を見つめる。

少し間が空く。

その沈黙が妙に長く感じた。

やっぱり聞けばよかっただろうか。

いや、でも――

その時。

また通知が震える。

『私もいない』

洸太の呼吸が、一瞬止まる。

静かな部屋。

冷蔵庫の音。

遠くのサイレン。

全部が急に遠くなる。

『あ、でもバツイチになった』

その一文を見た瞬間。

洸太は、スマホを持つ手に少しだけ力が入るのを感じた。