電車が揺れるたび、窓に映る景色が滲んでいく。
吊り革を掴んだまま、洸太はぼんやりスマホを見下ろした。
たった数通のLINE。
それだけなのに、昨日までの毎日とは明らかに違っていた。
通知が気になる。
返信を考える。
相手がどんな顔で打っているのか想像してしまう。
そんな感覚、もう何年も忘れていた気がする。
高校の頃は、それが全部だった。
文姫からLINEが返ってくるだけで嬉しくて。
返信が少し遅いだけで勝手に落ち込んで。
あの頃の自分は、本当に文姫中心で生きていたんだと思う。
今は違う。
……違うはずなのに。
洸太は小さく息を吐いた。
電車が駅へ滑り込む。
扉が開いて、人が一斉に降りていく。
その流れに混ざりながら、洸太はまたスマホを見る。
『お店どうする?』
文姫からだった。
少しだけ考える。
東京に来てから、それなりに店は知った。
会社の付き合いで行った居酒屋。
取引先との食事。
一人で入ったラーメン屋。
でも、文姫と行く店を考えた瞬間、急に分からなくなる。
高校の頃なら、ファミレスで十分だった。
コンビニ前に座って話してるだけでも楽しかった。
でも今は、大人だ。
十年ぶりの再会で。
しかも、次の約束。
洸太はホームを歩きながら、スマホを打つ。
『文姫、嫌いなもんあったっけ』
送ってから、少し笑う。
十年前なら即答できていたはずなのに。
『トマト』
返事は早かった。
『あとパクチー』
『変わってないな』
そのやり取りが、妙に心地いい。
改札を抜ける。
夜風が少し涼しかった。
駅前のコンビニから漏れる白い光。
信号待ちをする人たち。
誰も洸太のことなんて見ていない。
でも今だけは、この街の景色が少し違って見えた。
吊り革を掴んだまま、洸太はぼんやりスマホを見下ろした。
たった数通のLINE。
それだけなのに、昨日までの毎日とは明らかに違っていた。
通知が気になる。
返信を考える。
相手がどんな顔で打っているのか想像してしまう。
そんな感覚、もう何年も忘れていた気がする。
高校の頃は、それが全部だった。
文姫からLINEが返ってくるだけで嬉しくて。
返信が少し遅いだけで勝手に落ち込んで。
あの頃の自分は、本当に文姫中心で生きていたんだと思う。
今は違う。
……違うはずなのに。
洸太は小さく息を吐いた。
電車が駅へ滑り込む。
扉が開いて、人が一斉に降りていく。
その流れに混ざりながら、洸太はまたスマホを見る。
『お店どうする?』
文姫からだった。
少しだけ考える。
東京に来てから、それなりに店は知った。
会社の付き合いで行った居酒屋。
取引先との食事。
一人で入ったラーメン屋。
でも、文姫と行く店を考えた瞬間、急に分からなくなる。
高校の頃なら、ファミレスで十分だった。
コンビニ前に座って話してるだけでも楽しかった。
でも今は、大人だ。
十年ぶりの再会で。
しかも、次の約束。
洸太はホームを歩きながら、スマホを打つ。
『文姫、嫌いなもんあったっけ』
送ってから、少し笑う。
十年前なら即答できていたはずなのに。
『トマト』
返事は早かった。
『あとパクチー』
『変わってないな』
そのやり取りが、妙に心地いい。
改札を抜ける。
夜風が少し涼しかった。
駅前のコンビニから漏れる白い光。
信号待ちをする人たち。
誰も洸太のことなんて見ていない。
でも今だけは、この街の景色が少し違って見えた。
