君と終わった街で

雨上がりの交差点だった。

アスファルトはまだ濡れていて、街のネオンをぼんやり映している。

夜の空気は少し湿っていて、春の終わりみたいな匂いがした。

洸太(こうた)は仕事帰りだった。

コンビニの袋を片手に下げたまま、赤信号の前で立ち止まる。

疲れていた。

明日の仕事のことを考えて、スマホでも見ようとして――ふと顔を上げた。

向かい側の歩行者の列。

傘を畳んでいる女の姿が、目に入る。

黒髪のショート。

細い肩。

少し気だるそうな立ち方。

その横顔を見た瞬間、洸太の呼吸が止まった。

……まさか。

そんなはずないと思った。

でも、視線を外せなかった。

十年。

もう会うことなんてないと思っていた相手だった。