「Cyan、ちょっと相談いい?」
帰り支度を終えたコードが、カウンター脇にひょいと顔を出した。
相談?なんだろう。
促されるままにディスコードを開くと、1枚の電子ポスターが送られてきた。黒地に鮮やかな緑色の文字が浮かぶ。
〈Ba-Baru・SPECIAL LIVE〉
「何ですかこれ。」
「音楽イベント。Ba-Baru(バーバル)ってハコで開催されるんだけれど、俺出るんだ。ここ知ってる?」
聞いたことのない店名に首を横に振る。 だが――
「Ba-Baru?」
僕とは反対に、師匠がその名前に即反応した。
「知っているんですか?」
コードが驚いたように聞く。
「まあな…。…お前、声かかったのか?」
「はい。バトルの人を通じて」
「……お前あそこがどんなところか知ってOKしたのか」
師匠の表情が険しくなる。 2人は何の話をしているんだ?僕だけが会話の意味を掴めず、置いていかれている。
「あの、Ba-Baruってどんなところなんですか?」
師匠は少し息を吐き、説明を始めた。
Ba-Baruはこの近辺で一番キャパが大きいハコ。 そして“真の実力者”が集う場所。 一般人が個人でエントリーするのはまず不可能で、運営側から声がかかってようやく出演できる。 出演者はアマチュアでもプロでも、とにかくレベルが高い、とのことだった。
コードはバトルの関係者に声をかけられ、出演が決まったらしい。
「あそこのステージは本当の実力者しか立てねぇぞ。プロも来るようなモンだ。下手くそだったら叩かれる。」
空気が一瞬だけ重くなる。
そんな場所にコードは立つのか。
いや、立てるのか。
コードは… 実力も素質も覚悟もある。
高みを目指す人間だ。
「そのことで長澤さんにお願いがあってきました」
コードが師匠の方へ身体を向けた。
「Cyanと一緒に出たいんです。」

