婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 しんとした沈黙の中で、気の利いたひと言が思いつかなかったとしても許して欲しいの。

 ……彼女たちは悪くないとわかりつつも、あまりにも居心地が悪すぎるわ。

 はあっと大きくため息つつきつつ、ホール中央の螺旋階段を上がる。休憩室があるはずだから、そこで時間を置いて戻ろうと思ったのだ。

 クレイヴン公爵家は、リンスコット伯爵家と親交が深く、良く縁づいている。セシルと年齢の会う私も、子どもの時からここへは良く遊びに来ていた。

 そんな時にも、セシルの傍にはデイジーが居たけど……純粋な幼い頃には、それがどれだけ異常事態であるかを理解することは難しかった。

 まずは、デイジーは貴族でもなければ親戚でもない。ただの平民だ。けれど、セシルにとっての『妹のような幼馴染み』だった。

 彼女の身元は詳しくは知らないけれど、私はデイジーはおそらく乳母の娘ではないかと踏んでいる。裕福な貴族には乳母が居る。それならば、良くある話だからだ。

 ……その時、考え事をしていたせいで、私は階段を踏み外しかけた。

 そして、パッと支えてくれた腕に驚いて振り向けば、意外な顔が見えた。