婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 どうしても我慢ができなくて、私は大きくため息をついた。周囲の空気はより緊張感を増した。実際、ここに集まっているのはクレイヴン公爵家に縁強い令嬢ばかり。

 将来的にはクレイヴン公爵夫人になる予定の私には、嫌われるわけにはいかないのだ。

 皆、固唾を飲んで私の様子をうかがっている。

 もし……私が国王陛下なら、婚約者の居る男性に近付く女性は、すべて国外追放にしてしまうところだけど、残念ながら一介の伯爵令嬢で、法律制定の権利は持ち合わせていない。

 私とセシルの二人は両家のしがらみその他諸々で、政略結婚するしかない。けれど、私とセシルの間には愛らしい妹のような幼馴染みデイジーが居る。

 私が父に『あんな男と結婚したくない』と訴えても『結婚すればわかりあえるから、今は堪えてくれ』と、困った顔で繰り返すだけで埒が明かない。

 仕方ない……仕方ないと思いながらも、どうしても真に納得はまだ出来ていない。いえ。こんな状況にあって、真に納得なんて出来るのかしら。

 私は自分のせいで微妙な空気になってしまった席を立ち上がり、クレイヴン公爵邸の中へと入ることにした。