婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 私は涙が溢れてしまった。婚約者を苦しめれば、セシルが苦しむ。だから、そうしていた。彼は何も言えなかった。

 ……私のことを、守るために。

「アイリーン……本当に、本当に、あのデイジーは居ないのか?」

 セシルの声は信じられないのか、震えていた。

 彼だって、私に言いたいけれど、言えなかった。殺されてしまうから。魔物のことも言えず、私は彼に婚約を解消しろとで言った。

 どれだけ辛かったことか……。

「そうよ! 私がセシルを守ったのよ。守れたの。全部わかったわ。今まで、ごめんなさい。家庭教師に協力してもらって、調べたのよ。何も言えなかったのね。ずっと一緒に居るわ……これからは、ずっと、ずっと一緒よ。セシル」

「ああ。アイリーン」

 セシルは私の身体をギュッと強く抱きしめた。彼も私と同じように、泣いていた。

 そして、落ち着いたセシルはこれまでの無表情で無口な彼ではなかったことも、それはそれでより大好きになったので、私たち二人の今後に何の問題はなかった。

Fin