婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 妹のように愛らしい幼馴染みデイジーの正体は、クレイヴン公爵家に取り付く魔物ティアニー。

 何も知らされるはずもない私だけが、この魔物を封じる権利を持っていた。


◇◆◇


「……セシル!」

 私はノックをすることなく扉を開けてセシルの部屋へと入り、ベッドの中に居た彼は慌てて身体を起こした。

 いつもとは違う。

 もしかしたら、昨日のことが辛くて泣いていたのかもしれない。先ほど見たデイジーが、あんなにも上機嫌にしていたわけだわ。

 けれど、もうセシルが苦しんだり悲しんだりする必要はない。

「アイリーン?」

「セシル! もう大丈夫。魔物ティアニーは、私が眠らせておいたわ。百年間ね。契約通り、私が自分で気がついたから」

 私は呆然としているセシルへと抱きついた。

 彼がどれだけ辛かったか、それでも何も言えずに苦しんでいたことを思えば、なんだか胸がいっぱいになった。

「え? な、何があったんだ?」

「……クレイヴン公爵家にある呪いだったのね。私知らなくて、今まで苦しい思いをさせてしまって、ごめんなさい」