婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

「今すぐこの場から去れ、魔物ティアニー。今から百年の眠りにつけ」

 私は定められた言葉を言った。

 これは、次期クレイヴン公爵となるセシルが、婚約者である私を『愛しているから』効果のある言葉なのだ。

 愛らしい顔はどんどん歪み、彼女の中から肌を破り出て来たのは、どす黒い獅子だった。けれど、魔物は私には手を出せないそういう『契約』だからだ。

「どうして……どうして、わかったんだ。誰も話していないはずだ。それなのに」

 魔物ティアニーは私が彼女が魔物であることを知ったことを、未だに信じられないようだった。

 おそらくは、クレイヴン公爵家もリンスコット伯爵家の面々も、これを誰も私に明かすことは禁じられていた。

 セシルが愛する私と結婚する前に明かせば、私を殺すという契約だったから。

 こんな契約内容に何故したかというと、セシルの苦しみと悲しみを、私の身体を傷つけたりせずに味わい尽くすには、これが一番に良い方法だったからだ。

 魔物ティアニーの好物は、苦しみや悲しみ。クレイヴン公爵家の跡取りは、成年するまでにこれを与える義務がある。