婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

「……私もこれを手に入れたのは、偶然だったのです。知り合いの情報屋と連絡を取り、酒場でクレイヴン公爵家のことを探っていたら、とある老人に渡されました。彼は煙のように、すぐに居なくなってしまったのですが……」

「まあ。そうなのね……これには、何が書いてあったの?」

「ええ。もちろん、創作かもしれないという前提でお聞きください……そして、私だからこそ、アイリーン様にお伝え出来るということも……」

「良いから、早く教えて!」

 エリンの勿体ぶった言葉に耐えられなくて、私は先を促した。

 一体、何なの……? 怖い気もする。今まで前提にあった何もかもが全て、ひっくり返ってしまいそうで……。

「クレイヴン公爵家は、とある魔物に呪われているというお話です」

 おごそかにそう告げたエリンに、私はポカンとしてしまった。

「呪い……? どういうことなの?」

 エリンが教えてくれた、クレイヴン公爵家にまつわる伝説はこうだ。

 クレイヴン公爵家には、建国の際に暴れ回った魔物を封じる役目のある家系で、それは血縁者にならなければ、詳細は教えてはならない……そんな、呪いが掛けられている。