「クレイヴン公爵家に住むデイジー・ティアニーというあの女性ですが……乳母の子でもなく、両親もたどれませんでした。貴族の遠縁でもなさそうです。一番にそれらしいと思うのは、公爵夫妻が捨て子だった子を過去に拾って……ということですけれど、そういう訳でもなさそうです」
「え? そうなの? 私はてっきり……」
エリンの話を聞き戸惑った私は、デイジーがセシルの乳母の子かと思っていた。貴族には乳母というと、その後も身も周りの世話をしてくれたりと、身分を超えた特別な関係になりやすいのだ。
だから、貴族の身分を持たないデイジーが、妹のような幼馴染みで公爵家で特別待遇されているというのなら、これしかないと思っていたのに……それは違ったらしい。
「まあ……それならば、あの子は一体何者なの?」
私は素直にそう思った。
これまで私は、セシルには特別な幼馴染みが居て、婚約者の私のことなんて好きではないと考えていた。
平民の彼女とは公的に結婚することは叶わないから、私をお飾りの妻にするつもりなのだと。



